ポケモン第1世代に登場した超能力ポケモン、ユンゲラー。
そのデザインや能力には、1970年代の超能力ブームを牽引した人物・ユリ・ゲラーとの類似点が多数見られる。実際に、ユンゲラーの元ネタはユリ・ゲラーだという見方がファンの間では根強く、スプーンを使った超能力や名前の響きなどが重なることから、しばしば話題に上がってきた。
そして2000年、このキャラクターが引き起こした“ユンゲラー裁判事件”は、実際にユリ・ゲラー本人が任天堂を訴えるという前代未聞の出来事であった。この事件をきっかけに、ユンゲラーは長らくポケモンカードから姿を消すことになる。
その後も裁判の“嘘”や誤解がネット上で広まり、事件の真相が混乱を招く中、和解という形で封印が解かれるまでには20年という歳月を要した。
この記事では、ユリ・ゲラーが流行った背景から、ユンゲラーの問題視された理由、さらには裁判とポケカ復活に至るまでの一連の経緯を、事実に基づいて徹底解説する。
ユンゲラー裁判事件とは何だったのか?その経緯を解説
この章では、ユンゲラー裁判事件の背景や経緯について詳しく解説する。以下のポイントに沿って見ていこう。
- ユリ・ゲラーが流行ったのはいつ?
- ユンゲラーの元ネタは誰?
- なぜ問題視されたのか?
- ユンゲラー裁判事件とは?超能力者ユリ・ゲラーとの因縁
ユリ・ゲラーが流行ったのはいつ?
1970年代、世界中で「超能力ブーム」が巻き起こった。その中心人物となったのが、イスラエル出身の超能力者ユリ・ゲラーである。彼はテレビ番組でスプーンを曲げるパフォーマンスを披露し、一躍世界的な有名人となった。日本でもその人気は高く、1974年に初来日した際には連日メディアに取り上げられ、スプーン曲げが子どもたちの間で流行する社会現象となった。
当時の日本では「ユリ・ゲラーごっこ」が学校で流行し、彼の名前は“超能力”とほぼ同義語のような存在だった。その影響力は、単なるテレビタレントの域を超えており、彼の超能力が本物だと信じる人も多かった。科学的な根拠を求める声もあったが、それ以上に「不思議な力を信じたい」という大衆心理が時代を動かしていたのである。
ユリ・ゲラーの活躍により、他にも多くの“超能力者”が次々と登場するようになり、超常現象を扱うテレビ番組が増加した。こうして1970年代の日本は、超能力を娯楽とする時代へと突入していった。
ユンゲラーの元ネタは誰?
ポケモン第1世代に登場した「ユンゲラー」は、超能力タイプのポケモンであり、スプーンを手にした特徴的なデザインを持つ。この「スプーンで超能力を使う」という設定から、当時のユーザーの間では「これはユリ・ゲラーが元ネタなのではないか」と囁かれていた。
名前の由来に関しても注目されている。ユンゲラー(英語名:Kadabra)の「ユン」は日本語で“念”や“精神”を連想させる音であり、「ゲラー」は明らかに“ユリ・ゲラー”を連想させる発音である。また、進化前の「ケーシィ(Abra)」、進化後の「フーディン(Alakazam)」と合わせて、超能力や魔術を連想させるテーマが一貫して存在している。
ケーシィ 元ネタは実在の人物だった?超能力とテレポートの理由を解説
さらに、ポケモン図鑑の記述には「目が合うと頭痛がする」「強力なテレパシーを持つ」など、ユリ・ゲラーが主張していた超能力の特徴と一致する要素が多い。こうした点から、「ユンゲラーのモデルはユリ・ゲラーである」という解釈が定着していったのだ。
なぜ問題視されたのか?
ユンゲラーが問題視された最大の理由は、ユリ・ゲラー本人の特徴とポケモンの設定があまりにも類似していた点にある。まず外見的な特徴として、ユンゲラーはスプーンを手に持ち、精神力で戦う超能力系のポケモンとして描かれている。このスプーン曲げこそがユリ・ゲラーの代名詞であり、世界的に有名になった要因でもあった。
また、「テレパシーを使う」「催眠術に似た能力を持つ」といったユンゲラーの能力設定も、ユリ・ゲラーの超能力ショーと重なる内容であった。図鑑説明にも“超能力で周囲に影響を与える”といった記述があり、視聴者やユーザーの多くが「これはユリ・ゲラーをモデルにしている」と感じたのも無理はない。
さらに、名前そのものに“ゲラー”という音が含まれていたことも、法的な問題につながった要因とされている。実在の人物名が連想されるキャラクターを、本人の許可なく商業作品に登場させたことで、後にトラブルへと発展する伏線となっていた。
ユンゲラー裁判事件とは?超能力者ユリ・ゲラーとの因縁
2000年、ユリ・ゲラー本人が任天堂に対して訴訟を起こした。この訴訟の主張は「ポケモンのキャラクター“ユンゲラー”が、私のイメージを無断で使用しており、名誉を傷つけられた」というものであった。具体的には、名前・外見・能力などが自分に酷似しており、世界中で販売されているポケモンカードなどを通じて不利益を被っているという主張であった。
この訴訟は世界的に報じられ、日本のゲームファンやポケモンファンの間でも話題となった。結果的にこの騒動を受けて、任天堂およびポケモン側はユンゲラーのカード展開を一時中止し、2003年以降ユンゲラーはポケモンカードから姿を消すことになる。
なお、裁判自体は複数国にわたり複雑化したため、最終的な明確な判決は出ていないが、任天堂側が自主的にユンゲラーの使用を控えたことにより、長年にわたって“封印されたポケモン”となっていた。この出来事は、実在の人物がゲームキャラクターと衝突した数少ない実例のひとつとして語り継がれている。
ユンゲラー裁判事件の影響とは?ポケモンカードからの消滅と復活の理由
ここでは、ユンゲラー裁判事件がポケモンの世界に与えた具体的な影響について解説する。
- ユンゲラーがポケモンカードから消えた?
- ユンゲラー裁判は嘘?ネットで広がった誤解を検証
- 和解はどう成立した?ユリ・ゲラーが謝罪し封印が解かれるまで
- 21年ぶりにポケカに復活した背景
ユンゲラーがポケモンカードから消えた?
ユンゲラーは、2003年以降のポケモンカード(ポケカ)シリーズから完全に姿を消した。これは、2000年にユリ・ゲラーが任天堂を訴えた裁判に起因している。訴訟の結論こそ曖昧であったが、ポケモン側はトラブル回避のためにユンゲラーのカード化を自粛した。結果として、約20年間にわたりユンゲラーの新規カードは一切登場しなかった。
この影響は、ゲームとカード両方に波及した。特にカードゲームにおいては、ユンゲラーが存在しないことで「ケーシィ」から「フーディン」への進化ルートが途切れることになり、プレイヤーは実質フーディンを使えないという不便を強いられた。一部のシリーズでは進化手段が調整されたが、本来の連続進化が使えない点に不満の声も多かった。
また、ポケカのファンやコレクターの間では「幻のポケモンカード」としてユンゲラーの希少性が高まり、プレミア化する事例も見られた。こうしてユンゲラーは、法的トラブルによって事実上“封印”されたキャラクターとして長らく語り継がれる存在となった。
ユンゲラー裁判は嘘?ネットで広がった誤解を検証
ユンゲラーに関する裁判報道の影響で、インターネット上にはさまざまな誤情報が広まった。その代表例が「任天堂が敗訴した」「ユリ・ゲラーが勝訴したためユンゲラーが使えなくなった」といった内容である。これらの情報は事実ではない。
実際には、この裁判に明確な勝敗はついておらず、任天堂が裁判で負けたという事実も存在しない。あくまでトラブル回避のために、ポケモン側が自主的にユンゲラーを使用しなくなったというのが正確な経緯である。
また、当時のネット掲示板や個人ブログなどでは「ユンゲラー=ユリ・ゲラーという名指しは公式設定」と誤解されることも多く、都市伝説的に語られるようになっていった。これにより、事実とフィクションが混在し、ユンゲラー裁判事件の全貌は一層混迷を極めていった。
そのため、現在ユンゲラーについて語る際には、「裁判で敗訴して使用禁止になった」という誤解が広まっていることを理解し、正確な情報に基づいた解釈をすることが求められている。
和解はどう成立した?ユリ・ゲラーが謝罪し封印が解かれるまで
転機が訪れたのは2020年11月のことである。ユリ・ゲラー本人がTwitter上で突然、ポケモンファンに向けて謝罪のメッセージを投稿したのだ。彼は「私は長年ポケモンカードに“ユンゲラー”が登場できなかったことを深く後悔している。任天堂とポケモンファンに謝罪したい」と述べ、過去の訴訟に対して自ら和解の意志を表明した。
この投稿は世界中で話題となり、多くのメディアに取り上げられた。ユリ・ゲラーは同時に、「今後は“ユンゲラー”が再びカードに登場してほしい」ともコメントし、これによりポケモン側との関係修復が急速に進んだ。
任天堂側の公式声明こそ出されていないが、2021年以降、ユンゲラーのカード再登場が現実味を帯びてきた。この謝罪は、20年に及ぶ封印状態を解く大きな一歩となり、ポケモン史における“和解の象徴”として記憶されている。
21年ぶりにポケカに復活した背景
ついにユンゲラーが復活したのは、2023年に発売されたポケモンカードゲーム拡張パック「Classic」シリーズにおいてである。これは実に21年ぶりのカード復活であり、長年のポケカファンにとってはまさに歴史的瞬間であった。
復活に至った背景には、前述のユリ・ゲラーの謝罪と和解の表明がある。これにより、ポケモン公式も再びユンゲラーを商品化できる環境が整ったと考えられている。また、2020年代に入り「初代ポケモン」への再評価とノスタルジー需要が高まっていたことも、復活を後押しした要因のひとつだ。
ファンの間では「やっとケーシィ→ユンゲラー→フーディンの進化がカードでもできる」と喜びの声が上がり、SNSでも話題となった。こうしてユンゲラーは、トラブルを乗り越え、ポケモンの世界に正式に帰還を果たしたのである。
ユンゲラー裁判事件の真相とは?まとめ
- ユリ・ゲラーは1970年代に超能力者として一世を風靡し、スプーン曲げが社会現象となった
- ユンゲラーの元ネタはユリ・ゲラーとされ、名前・能力・外見が酷似していた
- ユンゲラー裁判事件では、ユリ・ゲラーが任天堂を提訴し、ポケモン側はユンゲラーの使用を自粛
- ネット上では「裁判で任天堂が敗訴した」などの“嘘”が拡散されたが、事実ではない
- 約20年後、ユリ・ゲラーが自ら謝罪し、和解の意志を表明
- 2023年、ユンゲラーはついにポケモンカードに21年ぶりの復活を果たした
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