アメリカ・ワイオミング州にそびえるデビルズタワーは、その高さと大きさ、そして頂上が平らな姿から「巨大な切り株」のように見えることで知られている。その姿は巨木の根っこのような柱状節理が地表に露出しているようにも映り、訪れる人々に強烈な印象を与えてきた。さらにネイティブアメリカンの伝説や、映画『未知との遭遇』で描かれた神秘的なシーンによって、その謎めいた存在感は一層強調されている。では、この奇岩は本当に切り株なのか。科学的な研究によって明らかになった形成の仕組みを知ることで、デビルズタワーの真実に迫ることができる。この記事では、デビルズタワーと切り株説をめぐる都市伝説と科学的解明に迫る。
デビルズタワーは巨大な切り株なのか?その見た目と都市伝説

- デビルズタワーとは?基本情報まとめ(どこにある?高さや大きさは?)
- 頂上に何がある?切り株に見える不思議な景観
- 巨木の根っこのように見える理由
- ネイティブアメリカンに伝わる伝説
- デビルズタワーにまつわる謎
- 『未知との遭遇』で描かれた巨大な切り株のような姿
デビルズタワーとは?基本情報まとめ(どこにある?高さや大きさは?)
デビルズタワーはアメリカ合衆国ワイオミング州の北東部に位置する巨大な岩山で、1906年にアメリカ初の国定記念物に指定された。標高は1,558メートルで、周囲のベル・フォーシュ川からの比高は約386メートルである。外観はほぼ円柱状で直径は約300メートル、頂上は平坦で東西に55メートル、南北に91メートルの広さを持ち、野球場ほどの規模がある。周囲は侵食されやすい堆積岩だが、デビルズタワー自体は硬い火成岩でできているため、風雨に耐え今日まで残っている。現在ではロッククライミングの名所であり、年間数十万人が訪れる観光地となっている。その独特の姿は古くから「巨大な切り株」と例えられてきた。
頂上に何がある?切り株に見える不思議な景観
デビルズタワーの頂上は外観の印象とは異なり平坦である。そこには草がまばらに生えており、岩場の隙間には小さな植物が根を張っている。この平らな地形が木の切り株のような印象を与えているのだ。頂上からはワイオミング州の草原やブラックヒルズの山々を一望でき、古代から祈りや儀式の場として扱われてきた。人工物は存在せず、自然そのままの姿が残されている。朝日や夕日の時間には岩肌が赤やオレンジに染まり、幻想的な景観を作り出す。この姿が人々を惹きつけてやまない理由である。
巨木の根っこのように見える理由
デビルズタワーが巨大な根っこのように見える理由は、その柱状節理にある。これはマグマが冷えて固まる際に体積が収縮して規則的な割れ目が入ることで生まれるもので、六角形や五角形の柱が垂直に並んでいる。その様子が地中の根が切り口から現れたように見えるのだ。また、塔の周囲には崩落した岩が積もっており、これも「根株」に広がるような印象を強めている。科学的には火成岩の構造であることが分かっているが、その奇妙な姿は人々の想像力を刺激し、巨木の切り株説が生まれる要因ともなっている。
ネイティブアメリカンに伝わる伝説
ラコタ族やキオワ族などの部族には、デビルズタワーにまつわる伝説が伝わっている。もっとも有名なのは「熊の爪痕」の物語である。巨大な熊に追われた少女たちが岩に祈ると、岩が天に向かって伸び、熊は必死に爪で引っかいたが届かず、その跡が岩壁に残ったという。少女たちはやがて空に昇り、プレアデス星団「すばる」になったと伝えられている。実際にデビルズタワーの柱状節理は爪痕のように見え、この伝説を裏付けるものとして語られてきた。今日でもネイティブの人々は儀式を行い、聖地としての意味を大切にしている。
デビルズタワーにまつわる謎
デビルズタワーは形や規模、そして文化的意味から謎めいた存在とされてきた。科学的には火成岩の冷却による形成とされているが、これほど規則正しく円柱状に残った理由は完全には解明されていない。周囲に同じような岩体が少ないため、その孤立した姿も不思議さを増している。また、巨大な切り株説のように科学的根拠のない噂が広まるのも、その神秘的な姿が原因である。自然現象と信仰、そして想像が交差する点に、この場所の「謎」がある。
『未知との遭遇』で描かれた巨大な切り株のような姿
1977年公開の映画『未知との遭遇』では、デビルズタワーが物語の舞台として登場した。UFOが降り立つ場所として描かれたその姿は、巨大な切り株のように印象づけられ、世界中に知られるきっかけとなった。この映画によって観光客が急増し、現代のポップカルチャーにおいても象徴的存在となった。映画を通じて「未知」と「神秘」のイメージが強化され、デビルズタワーは現実と空想をつなぐ存在として広まったのである。
デビルズタワー切り株説の真実に迫る科学的な解明

- デビルズタワーはどうやってできたのか?形成の謎に迫る
- 柱状節理が示す火山活動の痕跡
デビルズタワーはどうやってできたのか?形成の謎に迫る
デビルズタワーは切り株ではなく、火山活動によって形成された火成岩の岩体である。約4,000万年前、地下から上昇したマグマが地表に噴出せず、地下で冷え固まった。その後、周囲の堆積岩が浸食で削られ、硬い岩だけが残って現在の姿になったと考えられている。形成の仕組みには複数の説があり、ラコリス説はマグマが地層の間に入り込み盛り上がって冷えたとする説、火成プラグ説は火山の噴出口にマグマが詰まり固まったとする説である。いずれも完全な答えは出ていないが、科学的に切り株ではないことは明らかである。数千万年にわたる自然の力が作り上げた塔状の岩山が、デビルズタワーの正体である。
柱状節理が示す火山活動の痕跡
デビルズタワーの外観を特徴づける柱状節理は、マグマが冷えるときに体積が縮み規則正しい割れ目が生じてできたものである。多くは六角形で、鉛筆を束ねたような形に見える。幅は最大で6メートル、高さは180メートルに達する柱もある。柱状節理は冷却面に垂直に発達するため、デビルズタワーの柱が真っすぐに並んでいることは、地下でゆっくり冷えた証拠である。また、崩落した柱が麓に積もり、岩屑斜面を形成している。これらの特徴は火山活動と浸食の産物であり、切り株説を否定する科学的根拠である。柱状節理は数百万年に及ぶ地球の営みを記録する「自然の証拠」といえる。
デビルズタワーは巨大な切り株なのか?まとめ
- デビルズタワーはワイオミング州にある巨大な岩山で、高さや大きさが際立つ
- 頂上は平坦で切り株のように見える独特の景観
- 巨木の根っこのような柱状節理が外観の特徴
- ネイティブアメリカンの伝説に熊の爪痕の物語が残されている
- デビルズタワーには謎めいた印象があり、切り株説も広まった
- 映画『未知との遭遇』で世界的に有名になった
- 形成は火山活動と浸食によるもので、どうやってできたかは地質学で解明されている
- 柱状節理は冷え固まったマグマが収縮して生まれた火山活動の痕跡