テンプル騎士団は中世ヨーロッパで活躍した実在の騎士修道会であり、今もなお多くの謎と伝説を残している。そんなテンプル騎士団に「日本人はいたのか？」という問いは、歴史的な関心とともに、現代のフィクションや都市伝説によってさらに注目を集めている。
とくにマルタ騎士団に90年代の日本人が関わったという事実や、現代に残る現存している騎士団との混同も、この話題を複雑にしている。
また、十字軍との違いや、騎士団の起源にあたる9人の創設メンバーの存在、さらにはテンプル騎士団の現在について知ることで、歴史的な背景がより明確になる
。一方で、『ワンピース』や『アサシンクリード』に登場する騎士団のイメージ、フリーメイソンとの関係、聖杯をめぐる伝説、さらには彼らが「クズ」と呼ばれたり「呪い」をかけたとされる話まで、噂や陰謀論も数多く語られている。
本記事では、事実と噂を切り分けながら、テンプル騎士団と日本人にまつわる謎に迫っていく。
テンプル騎士団に日本人はいたのか？その可能性と背景を探る
- 日本人はいたのか？歴史的事実と仮説を検証
- マルタ騎士団に日本人がいた？90年の歴史と混同の原因
- 現存している騎士団とは？
- 十字軍との違いとは？役割と目的を比較
- テンプル騎士団の起源と9人の創設メンバーについて解説
- 今どうなっている？現代に残る影響とは
日本人はいたのか？歴史的事実と仮説を検証
まず結論から、テンプル騎士団に日本人がいたという確かな証拠は存在しない。
テンプル騎士団は1119年、エルサレムで結成されたキリスト教の騎士修道会であり、当時の日本は平安時代から鎌倉時代に入る頃であった。地理的にも宗教的にも交流がなかったため、騎士団に日本人が加わっていたとは考えにくい。
このような噂が出回るのかには理由がある。
一部の人々は、文化的な共通点やフィクション作品からの影響を受け、「テンプル騎士団に日本人がいたのでは？」と考えるようになった。武士道と騎士道の精神的共通点や、封建制度、忠誠心などが似ているという指摘もある。
しかし、これはあくまでイメージの話であり、実際の歴史記録には日本人が騎士団に参加した事例は確認されていない。したがって、「テンプル騎士団に日本人がいた」という説は歴史的な事実ではなく、現代の憶測や混乱によって生まれた仮説にすぎない。
マルタ騎士団に日本人がいた？90年の歴史と混同の原因
「テンプル騎士団に日本人がいた」という誤解は、実はマルタ騎士団との混同から生まれている可能性が高い。
マルタ騎士団（正式名称：マルタ主権騎士団）は、テンプル騎士団と同じく中世に誕生したカトリックの騎士修道会であり、現代まで続いている数少ない騎士団のひとつである。
マルタ騎士団は、20世紀以降も活動を続けており、名誉称号をさまざまな国の著名人に授与してきた。その中には日本人も含まれており、1990年ごろには日本人実業家や文化人が「名誉騎士」の称号を受けてニュースになった。これが「日本人が騎士団に所属している」という誤解を生む原因となった。
このような情報がインターネットやメディアで「テンプル騎士団」と結びつけられた結果、本来無関係なはずのテンプル騎士団にまで話が飛躍してしまったのである。実際には、マルタ騎士団とテンプル騎士団は別組織であり、混同してはいけない。
現存している騎士団とは？
テンプル騎士団は1307年にフランス王フィリップ4世の圧力によって弾圧され、1312年には教皇クレメンス5世によって正式に解散された。
つまり
テンプル騎士団はすでに歴史の中で消滅しており、現存していない。
一方、マルタ騎士団は今も活動を続けている。もともとは「聖ヨハネ騎士団」としてエルサレムで設立され、のちに拠点をロードス島、マルタ島へと移しながら活動を拡大した。現在では医療支援や人道活動を行う国際的な団体として、国連にもオブザーバー参加している。
このように、現存している騎士団とはマルタ騎士団や聖墳墓騎士団などであり、テンプル騎士団とはまったく別物である。ただし、現代には「テンプル騎士団」を名乗る団体も存在するが、それらは歴史的な正統性を持たない新興グループである。名前は似ていても、正統な継承関係はない。
十字軍との違いとは？役割と目的を比較
テンプル騎士団と十字軍はしばしば混同されるが、両者は異なるものである。
十字軍とは、11世紀から13世紀にかけてローマ教皇の呼びかけによって展開された大規模な宗教戦争である。目的は、イスラム勢力から聖地エルサレムを奪還することだった。
一方、テンプル騎士団は、その十字軍の活動を支援するために設立された騎士修道会である。
彼らの主な任務は、聖地への巡礼者を保護することや、前線で戦う兵士として戦闘に参加することであった。
つまり、十字軍が「戦争そのもの」だとすれば、テンプル騎士団はその中で戦う「部隊のひとつ」である。
また、騎士団は軍事活動に加えて資金管理や不動産の運用も行っており、金融的な側面でも十字軍を支えた。よって、役割も機能も異なり、混同してはいけない。それぞれが中世のキリスト教世界において異なる立場で動いていたことを理解することが重要である。
テンプル騎士団の起源と9人の創設メンバーについて解説
テンプル騎士団は1119年、ユーグ・ド・パイヤンというフランスの騎士によって創設された。
初期のメンバーはわずか9人で、すべてが信仰心の厚い貴族出身者だった。彼らは「キリストの貧しき騎士たち（Pauperes Commilitones Christi）」と名乗り、エルサレムでの巡礼者を守ることを目的に活動を始めた。
設立当初、騎士団には財産も兵力もほとんどなく、修道院の一角に住み込みながら質素な生活を送っていた。しかし、その誠実さと献身が評判となり、やがて教会や王族の支援を受けるようになる。
特に1139年、教皇インノケンティウス2世から「教皇直属」の地位を与えられたことで、一気に力を伸ばした。
この9人のメンバーの信念が、後の巨大組織へと成長する土台を築いたのである。名前が明確に記録されているのは一部のみだが、彼らの理念はテンプル騎士団の核心に今も息づいている。
今どうなっている？現代に残る影響とは
テンプル騎士団は中世に解散されたが、その影響は現代にも残っている。まず、彼らが行っていた金融業務は、後の銀行制度の基礎になったとされている。たとえば、遠隔地から安全に送金できるシステムや、預金証書の発行などは、騎士団が生み出した仕組みである。
「騎士団」という概念そのものも、テンプル騎士団によって確立されたと言える。
忠誠・規律・信仰・献身という価値観は、後のヨーロッパの軍事文化や文学にも大きな影響を与えた。
映画やゲーム、小説などで「騎士」が登場する際のイメージの多くは、テンプル騎士団に由来している。
さらに、現代にはテンプル騎士団の名を冠する団体や慈善組織も存在し、彼らの理念を受け継ぐと主張している。ただし、歴史的に正統な継承組織とは認められていない場合が多い。
このように、テンプル騎士団は組織としては消えてしまったが、その思想や制度、文化的影響は現代にも生き続けている。
テンプル騎士団と日本人にまつわる噂を徹底検証！都市伝説と事実
不可思議探検倶楽部
- ワンピースに影響を与えた？ファンの考察を紹介
- フリーメイソンの関係とは？陰謀論の真相
- 聖杯を守る者？伝説の宝の関係
- クズだったのか？弾圧の背景
- テンプル騎士団にかけられた呪いとは？中世ヨーロッパの闇に迫る
- アサシンクリードに登場するテンプル騎士団の描かれ方とは？
ワンピースに影響を与えた？ファンの考察を紹介
『ワンピース』には、テンプル騎士団を想起させる設定や描写がいくつか存在する。
とくに「Dの一族」の謎や、空白の100年、そして世界政府に抵抗する意志などの要素は、中世ヨーロッパの封建的権力と戦ったテンプル騎士団の構図とよく似ている。
ファンの間では、「Dの一族はテンプル騎士団をモデルにしているのではないか」という考察が数多く語られている。
この興味深い関連性については、すでに別記事で詳しく考察している。より深い背景や具体的な共通点を知りたい方は、下記のリンクからチェックしてほしい。
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テンプル騎士団が“Dの一族”のモデル？ワンピースに秘められた中世の記憶
フリーメイソンの関係とは？陰謀論の真相
テンプル騎士団とフリーメイソンの関係については、長年にわたって多くの噂や陰謀論が語られてきた。
よくある説は、テンプル騎士団が解散されたあと、その生き残りがフリーメイソンとなって活動を続けたというものである。
テンプル騎士団は1312年に教皇によって解散され、多くの騎士たちは処刑されたり逃亡したりした。
フリーメイソンは17世紀以降に登場した秘密結社で、当初は石工（建築職人）の組合だったと言われている。両者の間に直接的な証拠はないが、組織構造や儀式、シンボルの類似点から「つながりがあるのでは？」という推測が生まれた。
例えば、フリーメイソンが使う「コンパスと定規」や「秘密の階級制度」は、テンプル騎士団の中世的な儀式に似ている部分があるとも言われる。しかし、これらは偶然の一致、あるいは後世に取り入れられたものである可能性が高い。
現代の歴史学では、テンプル騎士団とフリーメイソンが直接つながっていたという確かな証拠は存在しないとされている。したがって、関係があったという話は都市伝説の一種であり、事実ではない。
聖杯を守る者？伝説の宝の関係
テンプル騎士団と「聖杯（せいはい）」の関係は、長年にわたって多くの伝説やフィクションの題材となってきた。聖杯とは、イエス・キリストが最後の晩餐で使ったとされる杯であり、キリスト教の中で特別な意味を持つ聖なる宝である。
伝説では、テンプル騎士団がこの聖杯を発見し、秘密裏に保管していたとされている。
この説は、中世の騎士道文学や、現代の映画『インディ・ジョーンズ』や『ダ・ヴィンチ・コード』などでよく描かれているが、実際の歴史記録には聖杯に関する証拠は存在しない。
そもそも、テンプル騎士団が聖地エルサレムで活動していたのは事実だが、聖杯を見つけたという記録は一切残っていない。この物語は、後世の創作やロマンから生まれた伝説である。
それでも、騎士団が「何か神聖なもの」を守っていたというイメージは、当時の信仰や役割から考えると自然なものである。だからこそ、聖杯と結びついたストーリーが今も人々の想像をかき立てるのだ。
クズだったのか？弾圧の背景
テンプル騎士団はクズだった
という極端な評価も見られるが、これは正確ではない。確かに、騎士団は1307年にフランス王フィリップ4世によって突然弾圧され、異端や腐敗の罪で多くの騎士が処刑された。
このとき、「偶像崇拝」や「同性愛」などの罪が告発されたが、多くは拷問によって引き出された自白に基づくもので、信ぴょう性に欠けている。
フィリップ4世は莫大な借金を騎士団にしており、それを帳消しにするために団体をつぶしたという説が有力である。
実際、処刑された騎士たちの多くは最後まで無実を訴えていた。
もちろん、大きな組織である以上、内部に問題を抱えていた可能性はあるが、組織全体が腐敗していたという証拠はない。むしろ、長年にわたって巡礼者の保護や財務管理に尽力していたことから、当時の信頼も厚かった。
つまり、「クズだった」という評価は後世の誤解や政治的プロパガンダに過ぎず、実際の歴史とは異なる。テンプル騎士団は忠誠心と信仰心を持った騎士たちの集まりであり、不当な処遇を受けた被害者でもあったのだ。
テンプル騎士団にかけられた呪いとは？中世ヨーロッパの闇に迫る
テンプル騎士団の団長だったジャック・ド・モレーは、1314年に火あぶりの刑にされる直前、この不正を行った者たちは、神の裁きを受けるだろうと言い残した。
この言葉はのちにテンプル騎士団の呪いとして語り継がれることになる。
実際にその直後、教皇クレメンス5世は1か月以内に病死し、フィリップ4世もその年のうちに急死した。
偶然とは思えない出来事に、多くの人々は「呪いが本当にかけられたのではないか」と信じた。
このような話は、当時の人々の信仰心や恐怖心を背景に広まり、騎士団に神秘的なイメージを与えることになった。現代の歴史学では、これらの死が単なる偶然だったと考えられているが、呪いの言葉は中世ヨーロッパの不安定な社会に強く響いたに違いない。
この呪いの話は、テンプル騎士団の悲劇的な最期を象徴するエピソードであり、彼らがただの軍事組織ではなく、信仰と誇りを持った存在だったことを印象づけるものでもある。
アサシンクリードに登場するテンプル騎士団の描かれ方とは？
アサシンクリードにおけるテンプル騎士団は、世界を秩序で支配しようとする巨大な組織として描かれている。彼らは自由を尊ぶアサシン教団と対立し、歴史の裏で暗躍してきた存在だ。
ゲーム内では、テンプル騎士団はしばしば権力を握る支配者層として登場し、その目的達成のためには手段を選ばない冷徹さも見せる。こうした描写は、史実とは異なる一方で、フィクションとして非常に魅力的に構成されている。
テンプル騎士団のゲーム内での役割や、アサシン教団との関係、物語を通じて見える思想の違いなど、より詳しい内容は以下の記事で解説している。興味があればぜひ参考にしてほしい。
関連記事
アサシンクリードのテンプル騎士団は何者か？真実の歴史と比較してみた！
テンプル騎士団に日本人はいたのか？まとめ
この記事では、テンプル騎士団に関するさまざまな視点を検証し、以下のようなポイントが明らかになった。
- テンプル騎士団に日本人がいたという証拠はないが、マルタ騎士団に関わった日本人の存在が混同の原因になっている。
- 現存している騎士団はマルタ騎士団などであり、テンプル騎士団は解散済みの歴史上の組織である。
- 十字軍は宗教戦争であり、テンプル騎士団はその一部を担った騎士修道会である。
- テンプル騎士団は9人の創設メンバーから始まり、巨大な組織へと発展した。
- 現在もテンプル騎士団の思想や影響は、文化や制度の中に残っている。
- 『ワンピース』や『アサシンクリード』などのフィクション作品で騎士団の要素が描かれ、日本でも関心が高まっている。
- テンプル騎士団とフリーメイソンの関係は都市伝説の域を出ず、事実とは異なる。
- 聖杯とテンプル騎士団の関係は伝説上のものであり、証拠は存在しない。
- 「クズだった」という評価は、当時の政治的な弾圧によるもので、実態とは異なる。
- 団長ジャック・ド・モレーの最後の言葉は、「テンプル騎士団の呪い」として語り継がれている。